ヘッジファンドの投資戦略について

2019年08月02日

ヘッジファンドを理解するうえで重要なのは各ヘッジファンドの投資戦略についてです。

ヘッジファンドにはそれぞれの戦略があり、運用戦略や投資対象は大きく異なっています。ヘッジファンドを選ぶ際にはそれぞれの投資戦略を理解しておく必要があります。

そこで、この記事ではヘッジファンドの投資戦略として代表的な戦略をいくつか紹介していきます。

ヘッジファンドとは

ヘッジファンドの定義は特段学術的に定まっているわけではない。2000年代初めまでは、ヘッジファンドの定義として、「私募形式で募集」「富裕層に提供される」「レバレッジ・空売りを活用する」「成果報酬を取る」「マネジャーの個人資金をファンドに入れている」等の特徴をもって、一般的な投資信託とヘッジファンドの違いが語られることが多かった。

しかし、機関投資家のマネーがヘッジファンドに向かい始めてからは多様なヘッジファンドが生まれたため、最近では「絶対リターンを追求している柔軟な投資戦略を持つファンド」という定義に落ち着いている。

投資家から見て、ヘッジファンドをアセットクラスと見れば、それは株や債券等の伝統的資産と異なる値動きをするオルタナティブなアセットということになるし、ヘッジファンドを運用業者として見れば、自分よりも優秀なタレントを雇うということである。

「富裕層のNo.1戦略」より引用

ヘッジファンド戦略の種類

ヘッジファンドの戦略は大きく2種類に分類されます。

『ディレクショナル型戦略』と『非ディレクショナル型戦略』です。

ディレクショナル型とは、市場全体の上げ下げ(β)を収益源にするのに対して、非ディレクショナル型はα型とも呼ばれ、運用者のスキル自体を収益源としています。

【ディレクショナル型の戦略の例】

  • 株式ロング・ショート戦略……値上がりする株式群を買い、値下がりする株式群を空売りしておく
  • グローバル・マクロ戦略……市場の歪みやトレンドに収益機会を見出す
  • CTA/マネージドフューチャーズ戦略……統計的手法により、発生した市場トレンドに応じてシステムにより収益を稼ぐ

【非ディレクショナル型の戦略の例】

  • レラティブ・バリュー戦略……価値計算上、割安なものを買い、割高なものを売る両建てを行う。債券アービトラージや株式マーケットニュートラルという戦略がある。
  • イベント・ドリブン戦略……「モノ言う」株主として企業に影響を与えたり(アクティビィスト)、企業の買収・合併時に現れる収益機会や破綻した企業の再生案件から収益を取りに行く手法

マスコミやメディアで注目されるヘッジファンドは『非ディレクショナル型』を採用したヘッジファンドが多く、一般投資家の注目を浴びるために上場企業の株を買い、経営改革案をぶち上げることで、アナウンスメント効果で株価を高めて売却したい動機のもとに動いています。

しかし、ヘッジファンドの多くは自らの投資戦略や投資アイディアを敵に見せることは長期的な競争優位性につながらないと知っているため、あまり目立つことはしません。ヘッジファンドがとる戦略としては、株式ロング・ショートとマクロ/CTAの2つが6割を占めています。

ヘッジファンドの投資戦略解説

ヘッジファンドの投資戦略の種類について理解したところで、ここからは代表的な投資戦略の具体的な方法について解説していきます。

株式ロング・ショート戦略

株式ロング・ショートはその名の通り、株式のロング(買い持ち)とショート(売り持ち)のポジションを同時に取るヘッジファンドの伝統的な手法です。業績などから割安と判断すれば買い、割高な銘柄を売って、片方あるいは双方の株価が修正された時点でポジションを解消して、市場リスクをコントロールした運用を実践することで利益を得る。

仮に予想外のファンダが発生した場合でも、片方のポジションが大きな損失を受けるリスクを減らしてくれるので、一方的な損失を被るリスクが低くなっています。

伝統的なロングオンリーの普通のアクティブ運用を行う投資信託は、市場動向の影響(ベータ)を受ける上に、現実にはベンチマーク(マーケット)に勝つこともままならないという現実があります。特に下落相場においては、ベンチマークより成績が悪くなりがちである。このような従来の投資手法の限界に対して、下落相場でも儲けるための手法となる。

何をもって割高・割安を判断するかによって、複数の戦術があります。

  • ファンダメンタル・アプローチ……企業リサーチによって株価を割安・割高を判断する
  • スタティスカル・アプローチ……類似セクターの株価は中心回帰(ミーン・リバージョン)するという理論値を基に判断する
グローバルマクロ戦略

グローバルマクロ戦略もヘッジファンドの代表的な投資戦略の1つです。

世界中の国や地域の経済・政治にかかわる情報を見通し、それに付随する各国の経済、金利、為替などをマクロ指標の予想を加えて投資を行う運用方法です。グローバルな視点で株式、債券、通貨、先物などの様々な商品に投資を行うことからグローバルマクロ戦略と呼ばれています。

世界中の国や地域の主要経済トレンドや政治的見通しを重視し、各国の経済、金利、為替などのマクロ指標の予想に基づき機動的にグローバルな投資を行う運用で、グローバルに株式、債券、通貨、先物など様々な投資対象についてロングおよびショートポジションをとります。

1990年代に世界中の金融市場に大きな影響を与えたジョージ・ソロスのクオンタム・ファンドやジュリア・ロバートソンのタイガー・ファンドなどが典型的なグローバル・マクロ・ファンドだと言われています。

CTA・マネージドフューチャーズ戦略

マネージド・フューチャーは、その運用元の商品投資顧問業者の頭文字をとってCTAとも呼ばれ、株式コメントなどによく登場する。CTA戦略の基本的なスタンスは、市場トレンドの予測は不可能という前提に立ち、実際に派生したトレンドに対して、自動的にシステム売買で対応するというもの。

一定期間レンジ相場が継続したマーケットが上下方向いずれかに大きく動いた際に、新しいトレンドが発生したとしてポジションを取ることから“トレンドフォロー戦略”と呼ばれることもあります。

発生したシグナルが実は「騙し」であることなど相場では日常茶飯事で、その影響を受けないためにもCTAは多くの市場に分散投資を行い、リスク管理を徹底している。

この戦略の投資家にとってのメリットは、他のヘッジファンド戦略に比べて流動性が高い(売り買いがしやすい)こと、及びリーマン・ショックのような下げ相場でもリターンを上げた実績があることである。

レラティブ・バリュー戦略

レラティブ・バリューは、「マーケットは合理的であり、いずれ適正価格に戻る(価格が正常に回帰した時点で収益を上げられる)」という考えに基づいて、株式、債券、通貨などの商品を買いと売りを組み合わせることにより生じる価格差によって利益を上げる戦略です。

アービトラージと勘違いする人が多いですが、アービトラージは市場のミスプライスを利用して稼ぐのに対して、レラティブ・バリューは価格がいずれ収束するという考えに基づき運用するので、市場の思わぬ動きによっては大きく損をする場合もあります。

イベント・ドリブン

イベント・ドリブンとは企業のM&Aなどの“イベント”が起きる際に株価の変動が起きると予想して収益を得る戦略だ。主なイベント・ドリブン戦略としては「M&Aアービトラージ戦略」や「ディストレスト戦略」などがあります。

  • M&Aアービトラージ戦略・・・M&Aで買収企業が提示した価格(買取価格)と市場価格の乖離に着目し、割高な方を売り割安な方を買う投資手法。
  • ディストレスト戦略・・・経営破綻や経営不振で割安な価格となっている企業の株式や債券を安く買い、その後価格が回復した時に利益を得る投資手法。
マーケット・ニュートラル戦略

実は機関投資家がヘッジファンドへの投資を強めたきっかけになったのが、このマーケット・ニュートラル戦略の流行です。

市場要因による株式の変動の影響を限りなく低くして、ポジションを持っている銘柄の株価だけを考えて運用できるようにするための戦略です。
市場全体の値動きのリスクから、購入した銘柄群のリスクを切り離すために、市場全体の値動きを反映するもの(株価指数先物等)を売り建てることで、言葉通りニュートラル(中立)としてリスクを減らしています。

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